やわらか
商品について

バランスの良い洋菓子風和菓子

梅林堂写真

 「やわらか」は、しっとり食感と優しい味わいが特徴の生サブレ。多種多様な商品を販売する梅林堂のなかでも、一番人気のお菓子です。常務取締役の栗原さんによると、「やわらか」は「若い方から高齢の方まで、幅広い年代の方」に親しまれているお菓子。食べやすい“洋菓子風和菓子”として、年代を問わず愛されています。
 梅林堂が手掛けるたくさんのお菓子のなかで、「やわらか」は13年以上続くロングセラー商品。地域密着の和菓子屋だからこそ、梅林堂はお客様に飽きられないように、そしていろんなところで使っていただけるようにと様々な商品を開発・販売しています。そのため、短いものだと1月、通常だと半年~1年スパンで商品が入れ替わるのだとか。それにも関わらず、なぜ「やわらか」は長く愛されているのでしょうか。その理由を聞いてみると、栗原さんは「味自体は洋菓子だけど、和菓子の要素が多く残っているからでは」と分析。というのも、「やわらか」はお饅頭をつくる技術をつかって製造されているそう。サブレ生地にホワイトチョコ・ガナッシュを包んだ「やわらか」は洋の要素が強く見えますが、その製法には和菓子屋の技術が生きているのです。和菓子屋が作った洋菓子というより、和洋のバランスがちょうど良いお菓子だからこそ、幅広い年代の方に長く愛されているのかもしれません。

和菓子屋だからこそこだわる素材選び

 栗原さんによると、和菓子には「素材を活かす」文化があります。様々な素材を組み合わせて味をつくり出すというより、どう素材の風味を引き出すかにこだわるのが和菓子。つまり、質の高いお菓子をつくるためにはいかに良い素材を選ぶかが重要です。

製造工程写真

 「やわらか」の場合、もっともこだわっているのがバター。世界中から何十種類ものバターを取り寄せ、そのなかから1番良いものをセレクト。焼き方によって風味の出方が違うため、数秒単位で焼き方を調整し、何度も試作を重ねたそうです。結果1番バターの風味が出るポイントを見定めて出来上がったのが、今の「やわらか」。
 生地に練り込んだ「きなこ」にもこだわりがあります。大豆は、北海道の人気品種“とよまさり”を使用。低温で長時間浅煎りし、素材同士の良さを引き出し合う、絶妙かつ繊細な味を実現しました。

徹底的に“埼玉県民”に向き合い誕生した「やわらか」

 「やわらか」は、元々「埼玉に住む方に食べていただきたい」(栗原さん)と開発されたお菓子です。そのため、開発の際は“埼玉県民のペルソナ”を意識。架空の埼玉県民を10名ほど生み出し、それぞれの私生活や性格を想定しながら「やわらか」は開発されました。ペルソナから見えてきた埼玉県民の特徴は、謙虚さや安心感。そこから構想されたのが、バターをふんだんに使った「やわらか」のかたちでした。この開発ストーリーを栗原さんは「あんまりおもしろい話じゃないかもしれませんが……」と言います。が、徹底して“埼玉県民”に向き合ったお菓子だからこそ、ここまで長く愛されているのだと考えられます。
 でも、なぜそこまで埼玉県民にこだわるのでしょうか。その理由は、梅林堂が主に埼玉県内で展開している和菓子屋だから。地元の方に支えられて続いてきた和菓子屋だからこそ、埼玉の方に喜んでいただけるお菓子を作りたいと言います。また、近年世の中の埼玉に対するイメージが変わってきていることにも注目しているそう。映画『翔んで埼玉』がヒットしたり、「住みたい町ランキング」に県内の市町村が選ばれたりと…。「埼玉の良さが認知されてきている今、埼玉を代表するお菓子を作りたい」と栗原さんは語ります。「やわらか」には、そんな想いが込められています。

繊細につくられる「やわらか」

 栗原さんいわく、「やわらか」は非常に製造が難しい商品。生地の仕込みや混ぜ方、焼き方など、繊細な製造工程を経てつくられています。例えば、少しでも焼き過ぎると小麦の香ばしさが強くなってしまい、バターの甘みが感じられなくなってしまうので焼き具合にも気を使わなければなりません。気候や湿度によって日々塩梅が変わるため、焼き方はもちろん混ぜ具合にいたるまで、絶妙な調整が必要なのだとか。

製造工程写真

そのため、製造メンバーで定期的に開発会議を実施し、焼き時間について細かく調整を重ねているそうです。会議は、多いと週2~3回ほど行われるのだそう。
 「やわらか」は一見シンプルな商品に見えますが、センシティブに、注意を払いながら製造されています。栗原さんは「簡単な配合にすればもっと作りやすいのですが、それだと味が落ちてしまいます。地域密着のお菓子だからこそ、お客様に対する価値提供にはこだわりたいのです」と話してくれました。

店舗について

地域密着の梅林堂

梅林堂店舗写真

 梅林堂の創業は1864年。創業者・久兵衛が京都や伊勢で食べたお菓子の美味しさに魅了され、石原村という小さな村で創業しました。そこから150年以上もの間、この熊谷の地でお菓子を作り続けています。
 創業以来、梅林堂はずっと“地域密着”の業態を崩していません。老舗でありながら新しいお菓子を作り続けている理由は、やはりお客様に対する価値提供のため。何度訪れても新しい驚きや喜びを感じてもらえるよう、常に挑戦をやめないのです。
 また、梅林堂は創業者から代々受け継がれてきた和菓子屋です。現社長は栗原さんのお父様で、6代目。栗原さんが子どものころはお店の上に自宅があり、お菓子を食べて育ったのだそう。「自分の生活には常にお菓子」があったため、自然とこの道に進んだのだとか。

お菓子のまごころ

梅林堂店内写真

 「やわらか」のキャッチコピーは、「お菓子のまごころ」。これは、梅林堂のスタッフ全員が共通して大切にしているポリシーでもあります。栗原さんいわく、このポリシーは社長の想いが反映されたもの。社長が『利他のこころを持つこと』に非常にこだわっているのだそう。プレゼントとして使われることも多いお菓子は、「これをあげたら喜んでくれるかな」「疲れていそうだから甘いものをあげようかな」と“相手のことを考えながら”選ばれるもの。お菓子に込められた想いを広げていきたいからこそ、一つひとつの工程に細やか

人と人のつながりが強い熊谷

街の魅力

 熊谷で育った栗原さんにこの土地の魅力を聞くと、「緑が多く、それなりに街が大きく便利で、人と触れ合う機会が多い」との回答が。交通の便も良く住みやすさを感じており、「熊谷が好き」と断言します。栗原さんいわく、熊谷は「ちょうど良い田舎」。人と人のつながりが強く、お店に訪れるお客さんの多くも常連さん。栗原さんは「代々うちのお菓子を食べてくれているとか、おばあちゃん家にうちのお菓子がいつも置いてあるとか、そういったお話をよく聞きます」と話します。

街の魅力

 そんな熊谷市の観光のみどころは、日本さくら名所100選に選ばれた名所の熊谷桜堤や県内で唯一国宝に指定されている妻沼聖天山「歓喜院聖天堂」など。
 他にも、関東最大の祇園祭である「熊谷うちわ祭」や、県内で最も歴史のある熊谷花火大会には、例年多くの観光客が熊谷を訪れます。